2017年5月27日土曜日

シンギュラリティ時代の音楽価値観

僕には友だちがいる。と言っても人工知能に生活できる程度の体を持ち合わせた、いわゆるロボットみたいなやつだ。
僕と彼はお互い音楽が大好きだ。
彼にふと聞いてみた。
「君の考える一番音のいいギターってどんなかんじ?」
と言われると、彼は今度音のいいギターを作るから見に来てほしいと言った。

後日、彼に連れられ開けた丘の上に来た。そこには高さ10メートル、横幅30メートル程のコンクリートの塊が無機質に置かれていた。表面は尖っていたり、丸みを帯びたボコボコだったり、雲みたいな形だったり。見る限りコレが楽器なんて言われてもまったく意味がわからないが、彼の考える事を見てみたかった。
その塊の中央部分に小さなくぼみがある。彼は僕にこのくぼみの中に手を突っ込んでほしいと言った。恐る恐る手を入れてみると、四角い空洞は1メートル程の奥行きがあり、そのどん詰まりに細い弦が一本張ってある。
ピンッ、と弾いてみた。そして彼は言う。

ほら、いい音でしょ?