フィンランド発 伝説になるであろうアーティスト"Petteri Sariora"
僕が尊敬してやまないギタリスト、いや、アーティストのPetteri Sariola(ペッテリ・サリオラ)が来日しました。
彼の来日した際のライブを見に行くのはこれで3回目。
今回は吉祥寺にあるSTAR PINE'S CAFEで公演が行われました。
彼の驚くべき天才的な技術と音楽のセンスが更に力を発揮したお陰か、5/9の前日5/8にも追加公演となり、同じ場所でライブが行われることになりました。
僕なりに彼の素晴らしいライブの内容をまとめてみることにします。
既に、ライブ観覧した他の方も感想をどこかに載せていると思いますので、僕は僕なりに長く彼を見てきた経験を活かして内容を詳しく記述していきたいと思います。
全曲を振り返る
今回のライブのセットリストです
Stomp
(Pete's introduction)
Wake me up before you go go
Silence (unplugged)
How much must you ... head before you learn (instrument new song)
Tsubasa You Are The HERO
Easy
(break time)
Release
Valve3
I still haven't found what I'm looking for
Cissy strut
I see you every where
Distorted love
Princess Mononoke
Prime
untitled blues
Mother song
1曲目は彼のいつもどおりの曲順です。
「フィンランドは寒いです。なのでウォーミングアップが必要なのです」
と言って演奏するのはStomp
CD音源とは違い、左手タッピングの時に明らかに一度に出す音数が増えているのがわかりました。
彼のリズム感の良さはこの曲で証明されると言ってもいいでしょう。
ライブでは足踏みをしながら正確なタッピングをし、崩れることはないです。
そして彼のギター人生を紹介するコーナーになります。
英語はあまり聞き取れないですが、流れはこうです。
僕の名前はPete(ピート)。ギターを弾いている。
僕の演奏を前に見たって人はいるかい?
OKOK、それじゃあ初めての人もいるからストーリーで自己紹介するよ。
初めて弾いたのはクラシックギターだ。
そんで、兄弟がロックロールブルースを見せてくれたんだ。
そして友人が教えてくれたスラッピングベースにハマったんだ。
もっと人気者に、女の子にモテたくてバンドを始めたかったんだ。
でもメンバーがいないから、僕はギターを叩き始めた。
バスドラム、ハイハット、スネア、右手はリズム。
んじゃベースを足していくよ。
次にギターだ。
最後に僕の声。
2曲目Wake me up before you go go
この曲もCD音源に比べて随分と脱力して弾いているなというイメージでした。
もっと手を柔らかく使って、歌声が埋もれないようにギターの音量と合わせてもバランスよく聞こえました。
途中のフィルインでは、日本に来たということもあってか「ハイ」と言ってちょっとしたことでも空気を掴んでいました。
曲最後のベース音もライブをしていく過程で思いついたアイデアなのでしょう、右手でベース音をスライドさせて弾くという演出は視覚的にもとても惹かれるものでした。
真似してみたいことばかりです。
3曲目と4曲目は後で紹介します。
5曲目は押尾コータローの翼~You are the HERO~のカバー。
当日実際に見てはないのですが、会場に押尾コータローが来ていたようです。
なので曲紹介するときも、確か誰かに相槌を打つような話し方をしていた気がします。
ペッテリが尊敬する本人を目の前にして演奏できたと考えれば、とてもペッテリにとっても幸せなことなのでしょう。
6曲目はライオネル・リッチーEasyのカバー。
手拍子から始まり、「君たちはメトロノームみたいだね!」と言ってイントロのパーカッションをとても楽しんでいました。
原曲でもあるコーラスをお客さんと一緒に歌い、原曲どおりのメロディラインでアレンジした素晴らしいギターソロ(もともとソロだが・・・)を披露して、休憩時間に入りました。
7曲目のReleaseは押尾コータローっぽい曲をイメージして作ったそうです。
途中に入ってくるタッピングハーモニクスの叩き方とか、ペッテリ曰く「コータローっぽい」らしいです。この曲は展開の仕方がとても面白くて好きです。曲の最後にパームを使ってベース音とハーモニクスを交互に鳴らして世界観を広げています。押尾コータローもこの部分が好きみたいです。前に押尾コータローのラジオでペッテリと対談してる時に言っていました。
8曲目はValve3。ディレイの音が光る一曲です。
初期のアルバムに入っている曲ということもあってか、マイケル・ヘッジスの色が強い曲です。
こういったポップでは無い曲をセットしてくる辺り、やはりマイケル・ヘッジスへの憧れと尊ぶ気持ちが溢れているのでしょう。
9曲目はU2のI still haven't found what I'm looking forのカバー。
ペッテリのとってはカラオケソングらしいです。初心者からしたら、あんな演奏をしながら歌うのがカラオケなわけない!というツッコミが飛んできそうですが、そこは置いておきましょう。
お客さんを「カラオケマシン」としてハミングもしっかりとって、一体感のある一曲になりました。
10曲目はThe MetersのCissy strutのカバー。
ライブではいつも、ペッテリの中のドラマーを召喚する儀式もセットで見ることができます。
この曲にはいつも本当に驚かされます。ベースがもう一人裏で演奏してるんじゃないかと一番カン違い出来る曲です。
ソロアコースティックギタリストでは無いものの、ソロギター界でコレほどファンキーなインストを演奏する人がいるでしょうか。
グルーヴ感で満ち溢れる、ペッテリのアレンジの中でもトップクラスのカバー曲です。
今回のライブではペッテリが手拍子を求めた時に
ドンドンチャ ドンドンチャ
というリズムに遊び半分で"Buddy you're a boy make a big noise" と歌ったのを発端に、お客さんが"WE EWLL WE WILL ROCK YOU "とコーラスし始めて、ペッテリが爆笑していました笑
「この出来事は絶対忘れないよ!」「僕はどこへ行ったんだ?」
と言っていて、ハプニングを会場の全員でとても楽しむことができました。
11曲目はI see you everywhere
We will rock youからのRockソングです。
彼のバンド、DEAD SIRIUSのライブでもバンドアレンジされて演奏されていますが、やはりアコギだけでもワンマンバンドの雰囲気が出せる辺りペッテリのスラム奏法が活躍します。
イントロ、アウトロのベースラインはベース経験してみないと思いつかないものだと思いますね。
12曲目はDistorted love
とてもポップで、ノリの良い曲です。
ペッテリのペダルボードにWHAMMYが導入されてから、いつもこの曲の中にはWHAMMYのオクターブ上げの音がふんだんに使われるようになりましたね。
13曲目はPrincess Mononoke
久石譲のもののけ姫のカバーです。
自分が聞いていて意外だった点は、歌詞の「もののけ達だけ」に当たる部分のメロディが、右手タッピングで作られていたことです。
CD音源だと手元が全く見えないので、左手のハンマリングだけで表現していると思っていたものですから、新たな発見です。
ライブ用にディレイで空間を加えられ、また違った幻想的な広がりをみせてくれました。
「日本はもののけ、フィンランドはムーミだね。ムーミンじゃなくてムーミだよ」
そうだったのか。調べてみると、Nは発音しないらしい。だからムーミ。
14曲目はPrime
ペッテリの十八番の曲です。
10代の頃クラシックギターでスラッピングをしていると、友人から「おいおいおい、そうじゃないよ」
と注意されたそうです。
スラップ意外もできる! そんな友人を見返してやろうと、友人に向けて作った曲、それがPrimeです。
「コレで文句ないだろ!」と言わんばかりのストーリーですね。
もちろん演奏は文句なしの素晴らしさ。
曲が終わった時の歓声が一番大きかったような気がします。
この曲を再び聞くためにライブに行ったと言っても過言ではないです。
15曲目がuntitled bluesです
「ブルースは好きかい?」
ここに来る人は、ペッテリのブルースを心待ちにしていたんです。
ベースソロはドロップDの音を更に1オクターブドロップして弾いているんですね。
だから絶対音感ある人からしたら全体のチューニングがずれているように聞こえるみたいですが、あいにく僕は相対音感しかないので気にせず楽しく聞くことができました。
最後のチョーキングでチューニングの狂わせにとどめを刺していますね笑
16曲目、最後の曲はMother songです
ライブの最後のは必ず演奏するナンバー。もちろん、母親に向けて作られた、バラード調の素敵な曲です。
3度めのライブとなると、コレでライブもおしまいだなぁという気になる曲でもあります。
優しく、時に力強く、静かにその曲は終わっていきます。
更に進化したペッテリの音作り
前回見に行ったライブは2014年(去年)の南青山MANDALAでした。
そこからは比べ物にならないくらい音作りが良くなっていました。
彼のギターの特徴であるコンタクトピエゾを利用したパーム音。
EQを更に研究したのか、はたまたライブ会場に合わせてセットする経験が豊富になって自分なりの音作りが可能になったのかは予想でしか無いですが、まさに「バスドラム」にも聞き間違える程の音になっていました。
ギターの弦の鳴りは基本的にはマグネットピックアップで拾うのですが、少なくもコンタクトピエゾでも弦の鳴りは拾います。
コンタクトピエゾの音作りは中音ブーストしていると彼が言っていたのですが、弦の中音の鳴りは気にならないイコライジングになっていました。
コンタクトピエゾとマグネットピックアップのバランスをしっかりとって、かつボディーの様々な場所を叩く音も生かせるような音作り、僕も参考にして精進したいです。
それから彼の更に特徴的な音でもある、ディレイペダルTIMELINEの使い方です。
アイスディレイと呼ばれるシンセのような処理がされるディレイを上手く使いこなしているのはもちろんですが、通常のシンプルなディレイの時に、曲に合わせてディレイタイムをその場で調節し、曲が際立つ使い方ができて素晴らしいです。
ただ表打ちのリズムに合わせるだけではなく、シンコペーションになるリズムを刻み、裏打ちのフィードバックで曲の世界観を広げていました。
彼が適した機材を使いこなすと、こういった音が出てくるのか、という驚きでいっぱいです。
アンプラグドのPetteri Sariola
去年の僕が見たライブではセットリストの中にアンプラグドでギターを演奏する曲目がありました。(Easy)
今回もアンプラグドで曲(Silence)を演奏してくれるサプライズをあたえてくれたのですが、前回とは違い、観客席の通り道まできて、目の前でスラム奏法を見せてくれたのです。
こういう演出が出できるのが、ペッテリが多くの人々に好かれる理由だと思います。
見に来る人が今、一番なにを望んでいるか、そしてその中で自分ができることとはなにか。
考えてみれば簡単な事ですが、実行する勇気が必要になります。
正直、アンプラグドになってしまうとスラム奏法の息が詰まってしまいます。
しかしそれを覚悟で演出してくれるのは、ライブを見に来てくれた人ともっと近い存在でいたいという気持ちが表れている証拠といえるでしょう。
ライブならではの儚さ
今回一番心に残ったのは新曲のHow much must you ... before you learn( ...←がわからなかった)です。
曲名をちゃんと聞き取れなかったのが後悔ですが、今回のツアーで初めて演奏したと言っていたので、他の曲以上に聞き入りました。
そしてもうステージで2度と演奏しないとも言っていました。
一度きりの貴重な、ライブならではの演出です。
「このライブで初めて弾くよ」というのはよくありますが、
「このライブで弾くのは最後だよ」と言われるのは、貴重な場所にいられたのだという特別な気持ちになりますね。
しばらくは日本ではお預け
吉祥寺STAR PINE'S CAFEでのワンショット
今年も期待以上のライブでした。
誰がここまでやれと言った。と言わんばかりの驚きばかりのライブですよね。
年々演出も凝ってきて、僕にとっては目の前で演奏してくれたのが一番の衝撃でした。
来年はThe Music Plantの野崎さんの予定もあってか、ペッテリのライブを組む予定が立てられないみたいです。
今年ペッテリのライブに参加出来た人は本当に幸運だと思います。
そしてこの素晴らしいライブを企画してくれた野崎洋子さんに、去年に引き続き感謝です。
またいつか日本でペッテリのライブが見られるまで、彼から与えられた音楽に対する姿勢から色々学んで、自分もギター練習に精進したいと思います。
ではでは!!